仕事のプロジェクトが佳境に入り、1日4時間ほどの睡眠で走り続けていたある朝、私は歯磨きの最中に鏡を見て、右側の頬の内側に直径3ミリほどの真っ黒な点を見つけました。一瞬、食べかすが付いているのかと思いましたが、何度口をゆすいでもその黒い影は消えず、それどころか指で触れると小さな膨らみを感じ、私はその場に凍りつきました。これまでの人生で口内炎には数え切れないほど悩まされてきましたが、そのどれもが白く輝くような痛みを持つもので、今回のような「沈黙する黒」は未知の恐怖そのものでした。その日から、私の頭の中はその黒い点のことで一杯になり、仕事中も会議中も、無意識に舌でその場所を探っては、まだ消えていない事実に溜息をつく日々が始まりました。2日目になると、黒い点はわずかに赤みを帯びた紫へと変化し、周囲がうっすらと腫れてきましたが、ネットで調べた悪性疾患の画像と見比べては、自分もそうではないかと最悪のシナリオを想像して夜も眠れなくなりました。3日目、意を決して歯科医院の予約を入れようとしましたが、あいにく休診日で、さらに私の不安は加速していきました。しかし4日目の朝、変化が訪れました。黒かった色が明らかに薄くなり、濃い赤色へと変わっていたのです。それと同時に、今までなかった口内炎特有のしみるような痛みが出始め、皮肉なことにその「いつもの痛み」を感じたことで、私はこれが深刻な病気ではなく、単に噛んでしまった傷が血豆になり、それが治ろうとしている過程なのだと確信することができました。5日目には、表面の皮が薄く剥がれ、中から少量の血液が混じった液体が出た後、見慣れた白い口内炎の姿へと変わりました。あの不気味な黒い影は、激しい仕事のストレスの中で、私が無意識に頬を強く吸い込み、粘膜を傷つけてしまった証拠だったのです。1週間が経過する頃には、痛みも完全に消え、粘膜は何事もなかったかのように元のピンク色に戻っていました。この一週間を振り返って痛感したのは、心身の極度の疲労が、自分でも気づかないうちに身体を傷つけ、そしてそれが視覚的な恐怖となって精神をさらに追い詰めるという悪循環の恐ろしさです。あの黒い点は、私に「少し立ち止まって休み、自分の身体を鏡で見るだけでなく、心の声も聞きなさい」と教えてくれた、厳しいけれど必要なメッセージだったのだと今は思えます。