-
抜歯後の食事、基本ルールは「優しく、冷たく、刺激なく」
親知らずなどの抜歯は、小さな手術です。歯を抜いた後の顎の骨と歯茎は、デリケートな傷口となっており、その治癒過程は、術後の食事内容に大きく左右されます。抜歯後の数日間、食事に少し気を使うだけで、痛みを和らげ、腫れを最小限に抑え、そして最も避けたい合併症である「ドライソケット」のリスクを減らすことができるのです。抜歯後の食事で守るべき基本のルールは、非常にシンプルです。それは、「優しく、冷たく、そして刺激を与えない」こと。まず、「優しさ」とは、食べ物の「硬さ」と「噛み方」に関わります。抜歯当日から数日間は、せんべいやナッツ、硬い肉といった、何度も強く噛む必要がある食べ物は絶対に避けましょう。噛むという行為そのものが、傷口に圧力をかけ、痛みを引き起こします。また、砕けた硬い破片が、抜歯した穴に入り込んでしまう危険性もあります。食事の際は、抜歯した側とは反対側の歯で、ゆっくりと優しく噛むことを徹底してください。次に、「冷たさ」です。抜歯当日は特に、炎症を抑えるために、できるだけ冷たいものや、人肌程度のぬるいものを選びましょう。熱いスープや熱いお茶は、血行を促進しすぎて、傷口からの再出血を招いたり、腫れを悪化させたりする原因となります。冷たいものは、患部を内側から冷やす効果もあり、痛みの緩和にも繋がります。最後に、「刺激を与えない」こと。唐辛子などの香辛料を多く使った辛い料理、レモンやお酢などの酸っぱいもの、そして塩辛いものは、むき出しになった傷口を直接刺激し、激しい痛みを引き起こします。また、アルコールは血行を促進し、炎症を悪化させるため、少なくとも抜糸が終わるまでは厳禁です。ゴマや小さな粒々の野菜など、傷口に入り込みやすいものも、避けた方が賢明でしょう。この三つの基本ルールを守り、おかゆやスープ、ゼリーといった、喉越しの良い、栄養のある食事を心がけること。それが、辛い抜歯後の期間を、少しでも快適に、そして安全に乗り切るための、何よりの秘訣なのです。