息子が幼稚園の年長になったある日のことでした。仕上げ磨きをしようといつものように息子の口を覗き込むと、奥歯のさらに奥に、見慣れない白いものが歯茎から顔を出しているのに気がつきました。乳歯はまだ一本も抜けていないのに、これは一体何だろう。虫歯とは違うようだし、食べカスでもない。少しパニックになりながらインターネットで調べ、それが「六歳臼歯」という初めて生える永久歯であることを知りました。乳歯の奥に、誰にも告げずにひっそりと誕生する一生ものの歯。その存在を知った時、親としての責任の重さを改めて感じました。早速、かかりつけの小児歯科に相談に行くと、歯科衛生士さんが丁寧に説明してくれました。この歯がいかに重要で、そしていかに虫歯になりやすいか。その日から、我が家の仕上げ磨きは新しいステージに入りました。それまでは前歯や乳歯の奥歯を磨くだけでしたが、ターゲットにこの新しい六歳臼歯が加わったのです。息子の小さな口の、さらに奥にあるその歯を磨くのは至難の業でした。歯ブラシを色々な角度から入れ、小さなヘッドのものを試したり、時にはペンライトで照らしながら場所を確認したり。息子も最初は嫌がりましたが、「これは王様の歯なんだよ。ピカピカにして王様を守ろうね」と話すと、少しだけ我慢してくれるようになりました。後日、歯科医院で虫歯予防のシーラントをしてもらった時は、まるで歯に鎧を着せてもらったような気持ちになり、親子で安堵したのを覚えています。あの日、偶然見つけた小さな白い突起は、今ではすっかり大きくなり、食事のたびに力強く活躍しています。