顎の痛みに悩んでいる人の中には、慢性的な頭痛や肩こりにも同時に苦しめられているケースが少なくありません。一見すると関係なさそうなこれらの症状ですが、実は密接に繋がっている可能性があります。特に顎関節症が原因の場合、その影響は顎だけにとどまらないのです。人間の頭部から首、肩にかけての筋肉は、互いに連動して機能しています。顎を動かすための筋肉、いわゆる咀嚼筋は、側頭部や首の筋肉と繋がっています。そのため、歯ぎしりや食いしばりなどで顎の筋肉が常に緊張状態にあると、その緊張が周囲の筋肉にも波及していきます。側頭部の筋肉が緊張すれば、頭全体を締め付けられるような緊張型頭痛を引き起こし、首や肩の筋肉にまで影響が及べば、つらい肩こりの原因となります。つまり、顎の関節や筋肉の問題が、ドミノ倒しのように関連する部位の不調を誘発しているのです。いくらマッサージに通って肩をもんでも、頭痛薬を飲んでも症状が改善しない場合、その根本原因は顎にあるのかもしれません。このような場合、顎関節症の治療を専門とする歯科や口腔外科を受診し、顎の緊張を和らげることが、結果的に頭痛や肩こりの解消に繋がる可能性があります。治療法としては、噛み合わせを調整するマウスピースの装着や、筋肉の緊張をほぐすための理学療法などが行われます。顎の痛みは、体全体のバランスの乱れを知らせるサインかもしれません。関連する症状も含めて専門医に相談することが、包括的な健康回復への鍵となります。